表 題 |
幸い怪我はなかったが、まだ登録半年の自車はフレーム損傷等により、修理費の見積もりが100万円以上となった |
論 点 |
格落ち損(評価損) 日本自動車査定協会 物損事故 |
依頼主 |
50代 男性 |
(相談前)
赤信号で停止中、後方から脇見運転の加害車両が自車の左後部に追突するという事故に遭いました。
私の車は、国産のいわゆる高級ワンボックスカーで、新車で購入してからまだ半年、総走行距離は約3000キロメートルでした。なお、新車購入時の車両価格は約300万円、支払総額は約380万円でした。
ディーラーの修理見積もりは、フレーム損傷等で100万円以上。事故歴がついてしまい、リセール時の格落ち損(評価損)が大きいとのことでした。
相手保険会社は、「修理費用のみ支払う」「もう新車とは言えない」「評価損は支払えない」の一点張りでした。
納得できず、自分の任意保険会社を通じて弁護士さんを紹介してもらい、相談しました。
(相談後)
弁護士さんから、ご自身の経験として、車種は国産高級セダンではあるが、車両支払総額がほぼ同じで、走行距離と登録年数が私の場合よりも少し長いケースでも評価損が認められたことがあると話してくれました。その事例と比べて、私の場合に評価損が全くつかないとは考えにくいとの説明でした。
相手保険会社の話し方や態度が高圧的で、ストレスが募っていたこともあり、弁護士さんに依頼することを決め、交渉をお願いしました。
その後、弁護士さんは、相手保険会社から「修理費用の20%の評価損を支払う」との譲歩案を引き出してくれました。さらに、「日本自動車査定協会から減価証明書を取って交渉材料に使う方法がある」と教えてくれました。
そこで、その減価証明書を取ってもらうと、弁護士さんから、「減価証明書の査定額から考えて、修理費用の約27%が最上限になる」という説明でした。
これらを踏まえた交渉の末、「修理費用の25%を支払う」という内容の格落ち損(評価損)に同意し、示談しました。
(弁護士からのコメント)
修理により原状回復がなされても、事故歴により、中古車市場では価格が低下する場合に、事故当時の車両価格と修理後の車両価格との差額を、格落ち損(評価損)と言います。
実務上は、初年度登録からの期間、走行距離、損傷の部位と程度、車種(人気、購入時の価格、中古車市場での価格)等が評価損の発生可否の基準となっています。
一般的に、外国車や国産高級車は、購入時や中古車市場での価格が高いことから、初年度登録からの期間や走行距離が長くても、評価損が認められやすい傾向があります。
これに対し、国産大衆車では、人気があっても購入時や中古車市場での価格がそれほど高くはないため、初年度登録からの期間や走行距離が長いと、評価損が認められにくい傾向があります。
評価損の算定は、修理費用の大小が損傷の大小を示すため、修理費用を基礎とし、その一定割合に相当する金額を評価損とすることが多いです(修理費基準方式)。
この算定方式で評価損が認められる幅は、修理費用の10%〜30%の範囲がほとんどですが、外国車では30%以上、希少価値のある高級車では50%以上という事例も報告されています。逆に、国産車は10%台が多いと言われています。
日本自動車査定協による減価証明書は、評価損の交渉の一資料となります。裁判の証拠としては、強力なものとはされていない点については、注意が必要です。
本件では、国産車ではあるものの、いわゆる高級車であり、登録半年とほぼ新車であり、走行距離が短く、にもかかわらず、左後部にひどい被害を受け、フレーム損傷等が生じていたことなどから、高めの評価損が認められました。
また、日本自動車査定協会の減価証明書が、評価損の算定を5%アップさせる有効な資料として評価された事例でもあります。
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